Hanashyo Project Report

新しい日本文化を発信していく職人<プロフェッショナル>同士が語る本音トーク。リアルな職人の世界を感じてください。不定期更新ですが、今後もさまざまな分野の方々との対談を予定しています。

リアル職人<プロフェッショナル>

職人
辻 諭(有田焼 辻与製陶所 与山窯 7代目継承者)
熊倉隆行(江戸切子の店華硝 3代目継承者)
聞き手
熊倉千砂都(江戸切子の店華硝)

2010/10/8 skype 佐賀県と東京にて

辻 諭:
そうですね。平野さん(コラボ仲間。兵庫県の豊岡柳のプロデューサー)が言う「打ち首」ものというのは、あながち間違ってないです。実際に有田は職人を囲って関所を設けていました。技術のある職人を外へ出さないためです。だから、今の時代にしかできないモノって必ずあると思っています。
有田は約400年の歴史があって、その中で培われた技術は一生かかっても追いつけるかどうか、と本当に思います。昔の作品でも、名もない職人が造った焼き物にもとても素晴らしいものがたくさん残ってます。
華硝:
技術に関しては継承しても、発想を新しくすることが大事ですね。
隆行:
技術っていうのはあくまで手段であると思います。マネはできても感性だけはその人のすべてを表すと思うのでそれを全力で出し切ればよいのではないかと。
辻 諭:
伝統工芸は今までもそうした変化を経て、今があるということですしね。
華硝:
伝統はその時代に一番よく研究をして、一番すばらしかったもので、勝ち残ったものだと思います。
隆行:
必要なものが残って今を形成しているし、今僕らがやっていることが100年先にのこっていれば嬉しいなと考えます。
華硝:
職人として二人が今、一番力を入れていることはなんですか?
隆行:
基本技術の習得です。まだまだ修行が足りませんので
辻 諭:
職人として、というのはなかなか難しい質問です。
隆行:
それと、無謀覚悟で色々な形に挑戦することかなと。そいういう意味では辻さんとやっている異素材との組み合わせには力を入れていますし、来年あたりはランプじゃなくてもやっていきたいですね。
辻 諭:
ベタな回答で申し訳ありませんが、やはり基本的なことばかりです。クオリティの高いもの、お客さんに喜んでもらえるものを造るということですね。
隆行:
自分の商品が売れたときってその日一日すごく嬉しいですね。
辻 諭:
千砂都さんが前にセミナーでおっしゃってたことですが、江戸切子と有田焼では最初に窯に入れるのと最後に入れる違いがあったり、伝統的な文様で麻ノ葉のように同じ絵柄があったりするのも、とても面白いなぁと思います。
隆行:
カッティングって絵付けのように自在性が少なく制約も多いけど、モチーフのアレンジができるっていうのは楽しいですよ。偶然性がすごく高いですし。
辻 諭:
日本人を形成してきた歴史の中で工芸はとても密接していて、現代の日本人が見えても、言葉にはできない、無意識な部分でナショナリズムを感じる要素があり、それだけの力があると感じました。華硝さんと一緒にランプを作ったり、展示会でセミナーをすることで、そういうことを考えられるようになったんだと思います。
華硝:
コラボの影響は作品だけでなく考え方にも及ぶということですね。
辻 諭:
それから 隆行くんへの回答です。たしかに焼き物のほうが造る自由度は高いと思います。表現の仕方がたくさんあるので、それはとても楽しく、魅力的なことです。
隆行:
僕は逆にこれが日本だ!!ってのよりも無国籍な感覚でもよいと思うのですね。もうこれから先って日本製だからよいっていう流れも薄れてきてしまうかもしれないですし。あと、結構、自分の作品にダイレクトに影響もありますね。おっこの絵付けのカーブいいな!っとか。そういうのって結構頭に残ってたりする。それをちゃっかり試してみたりしてます
華硝:
そろそろ最後の質問へ
辻 諭:
もう最後ですね。時間がたつのは早いです。楽しいのでもっとやりたいですね。
華硝:
日本らしいもの、日本独自ものといわれて思いつくものはなんですか
辻 諭:
社長の質問に簡単に答えられないですよ~隆行さんはなんだと思います?
隆行:
繊細さかなと思います。
辻 諭:
実は、外国から来た観光客のお土産1位は有田焼だそうです。えへへ。
華硝:
日本茶とかは・・・?
辻 諭:
日本茶は中国から来て、日本人向けに改良されました。中国茶は香りを楽しみ、日本人は味を重視したそうです。中国茶は聞き茶っていいますものねえ~そういう楽しみ方に実はそれぞれの国の文化性が表れているのかもしれないですね。お茶のインストラクターの試験でも聞き茶があるそうですよ。日本酒の時でも江戸切子と有田焼で飲み比べると違う味に感じるのはとても驚きました。(以前にセミナーで実際にやってみたことがあります)
華硝:
あの体験は私も驚きました~
では、日本らしいもの、日本独自のものは次回の課題ということで。
今後のコラボの展開としては?提案とかありますか?
隆行:
それぞれがお気に入りを見つけられるような展示即売会やりたいですね。セミナーと合わせて。
辻 諭:
コラボって、モノじゃないんですよね~。それはちゃんと言いたいです。うまく言葉にできないのが悔しいですが・・・
隆行:
とあるバイクメーカーのデザイナーが言っていたのは、デザインするっていうのは今までの自分の経験に感性が合わさってできるもんだって言ってました。同感でした。ただ、多く見たからよいってものではなく、出力できるだけの引き出し、すなわち表現できるだけの技術が必要ですよね。
辻 諭:
デザインって昔から職人がやってたことですからね。
華硝:
ものごとをストックして、それをタイミングよくアウトプットできる能力をこれからは必要ってことですね
隆行:
そうそう、だからデザイナーとのコラボが伝統工芸の分野で今もてはやされているのが不思議でならないです。職人はデザインするものだと思うので。
辻 諭:
素材を一番よく知る人が一番良いデザインができると思います。
隆行:
それにはかなり強く同感です!
辻 諭:
デザイナーって形や絵柄を考えるだけじゃないんだけど、そう勘違いされてしまっている現状はありますね。
華硝:
長くなってきましたのでこのあたりで今日は。お二人ともありがとうございました。
また次回は違うテーマで対談したいですね。
辻 諭:
楽しいので、またやりたいです。