Hanashyo Project Report

新しい日本文化を発信していく職人<プロフェッショナル>同士が語る本音トーク。リアルな職人の世界を感じてください。不定期更新ですが、今後もさまざまな分野の方々との対談を予定しています。

リアル職人<プロフェッショナル>

職人
辻 諭(有田焼 辻与製陶所 与山窯 7代目継承者)
熊倉隆行(江戸切子の店華硝 3代目継承者)
聞き手
熊倉千砂都(江戸切子の店華硝)

2010/10/8 skype 佐賀県と東京にて

辻さんとの出会いは4年前の展示会にて。華硝のプロジェクトである異業種コラボ作品として、国産ランプの制作をしようという話になったのがきっかけ。説明もなく、いきなり「作品をつくりましょう」との声がけに、辻さんが快諾して下さり、はじまりました。以来、作品づくりだけでなく、一緒にイベントを開催したり、セミナー講師をしたりと、職人同士の連携も深めて行くことになりました。同じ31歳、跡継ぎ同士ということで、職人としても友人としても仲の良い二人が、佐賀、東京とそれぞれの工房にいながら対談をしました。

隆行:
よろしくお願いいたします。
辻 諭:
よろしくお願いします。
華硝:
よろしくお願い致します。
華硝:
まずは飯椀グランプリ入賞おめでとうございます。
辻 諭:
ありがとうございます。ラッキーだったなぁという感じです。ここ何年かはまったくコンペに出品できてなかったので、久しぶりに出してみました。
華硝:
今回のテーマは「コラボ」に関してですが、まず、それぞれがコラボしてランプを制作しましたが、やってみての感想はいかがですか?
隆行:
先にベースを制作していただき、シェードのデザインとのバランスをとるというのは初めての経験でしたが、意外にうまくいったかなとは思ってます。
質感の予想がつかなかったですね。
辻 諭:
まずはコラボの感想ですが、最初は本当に私でいいのか?と思ってました。ランプを作ったことがなかったので、勝手がわからず、最初のダイヤ彫ではご迷惑をおかけしました。
華硝:
迷惑なんてないですよ。私たちも初めてだったのでどうなるかことかと思いました。ダイヤ彫りは辻さんの特徴が表れている作品なので、最初の作品にしていただいて良かったと思ってます。
辻 諭:
仕事という感覚ではなく、どちらかというと純粋にモノ造りを楽しむという感覚です。前向きです。こちらが先に作るということで、かなりのプレッシャーがありました。
華硝:
それが一番ですよ~私たちも、コラボの意義は「楽しむ」だと思います。
隆行:
楽しんだ上で見ていただく方に理解していただくってのが一番大事だと思っています。
辻 諭:
そうなんですよね。コラボってなんでもないことにも使われて、私たちがやっていることをコラボではなく、違う言葉で表現できればと思っています。
隆行:
そうそう、コラボってあまりにも簡単に使われすぎていますね。
辻 諭:
華硝さんの魅力の一つはモノだけ見てもらうということではなく、考え方やプロセスがしっかりしてることなんですよね。
華硝:
コラボっていうのは、そのプロセスを作り手もそれを見る人も楽しむものだと思うんですよ。なので、私はよく「ぶつかり合い」=コラボという表現をしています。もっといえば、サムライ同士が向き合っているようなイメージで。
隆行:
ぼくたちは、コラボ=鬩ぎ合い ってのを僕らは大事にしましよう!!勿論だめだしもしてもよいわけだし。
辻 諭:
たしかに。最初は自分の良さをしっかり出すことを意識しすぎて、サイズがかなり大きくなってしまいました。二回目は気を遣いすぎて、華硝の社長には遊びがないと言われて、見透かされてしまいました。
華硝:
この話辻さんよくセミナーでも話ますよね~それだけ印象的だったんですね。コラボしてみて、自分だけという視点では難しいなということは、見ていた私にもよくわかりました。
隆行:
当然一回でピッタリ合うなんてことはないのでお互い仕掛け合いながらですね。
作りながら「これって合わせられるもの作ってくれるかなぁ」って思うことがあるますね。
華硝:
コラボをそれぞれしてみて、自分の工芸への影響とかありますか?
辻 諭:
やはり、自分自身の視野が広がったと思います。
隆行:
辻さんのデザインかなり参考にさせてもらってますよ。
辻 諭:
同じ年で、同じように伝統工芸に関わり、同じような立場で頑張っている人がいるというのはとても励みになります。
華硝:
それって重要ですよね。工芸品というのは人がつくるものなので、人とのつながりが作品をつくりますよね。
隆行:
そしてやはりお客様に気に入ってもらえて購入していただくというのが最終目標にしないといけないと思ってます。でないとただの自己満足と同じだと思うので。
辻 諭:
そうですね。最初は一モノ造りとして挑戦する気持ちでしたが、そういった結果が出るのは他の似たような立場の人にも良い影響を与えられると思います。
隆行:
実際に同じようなことをしている人たちはいるけれども、売れたかどうかの話ってのはなかなか出てこないし、直接作り手同志がおこなっているというのはすごく稀なパターンだと思いますよ。
辻 諭:
私は作るほうが得意で、販売が得意ではないので、そこは私にはネックな部分です。
華硝:
販売という点では先ほども話しましたがコラボということのプロセスを伝えることや意義が大事だと思ってます。
よくセミナーで話しますが、昔の幕藩体制だったらぜったいにこうした連携はありえないことで、コラボ作品というのはいまだからこそできるものだと思っています。そういう意味でこの作品づくりは、次世代型の日本の工芸の先駆者になれると思ってます!