自分の考え方と個性にしっかりと向き合う
最近の自分の作品を改めて振り返ってみると、父とは異なる方向性の作品が増えてきたように感じます。
父は自分の感性を頼りに、一気に作品を仕上げますが、私の場合、様々なカットを検討しながら作品を作り上げていきます。
素材の特徴を検討したり、使う方の気持ちを考えたり様々な点を検討します。
例えば、私は父とは異なりお酒を嗜むのですが、お酒を飲まれる方の気持ちになって底面のデザインを考えます。
江戸切子の底面は、側面とは異なり使っている人からしか見えません。
お酒を飲みながら感じる、“私だけが知っている”というお客様の満足感を満たしてあげたい......そんな気持ちが強いのです。
このような感覚は、父とは全く異なる感覚だと思います。
父からは多くのことを学びましたが、これからもきっと追い越すことはできないでしょう。
それは技術的な視点というよりも、むしろ感性という視点で考えた場合ということです。
父には父のものづくりに対する哲学があり、私にもそれがある。
代ごとに個性が違ってもいいんじゃないかと思うのです。